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「2012バイオ未来キッズ活動発表会」の報告

1.日時:2012年12月8日(土)14時~18時

2.場所:丸高ビル5階会議室(東京都中央区銀座6-16-12)

3.プログラム:

14:00発表1微生物の働きと発酵の面白さを学ぶ
~ヨーグルトの試作&顕微鏡の製作・観察を通じて~
発表者:永井和夫 東京工業大学名誉教授(本会理事)
有江泰彦 ㈱明治食品開発研究所専任部長
実施校:北区立滝野川小学校6年生
 
15:20発表2消化における「タンパク質」の分解についての新しい実験方法開発
~高純度精製タンパク質分解酵素を使用し、色の変化で的確に観察可能~
発表者:横関健三 前京都大学客員教授 味の素上席理事(本会正会員)
実施校:品川区立小中一貫校伊藤学園8年生(中2)
 
16:30(講演)「おいしさは脳が決める」
~ここまで分ったグルタミン酸の有用性~
講師:鳥居邦夫 鳥居食情報調節研究所代表取締役(本会正会員)

4.参加者:

法人外:12名(文科省研究所3名、教科書出版社3名、中学理科教員等6名)
法人内:20名(発表協力者2名含む)

5.概要:

「バイオ未来キッズ」は、2012年当初から本格的に活動を開始したが、本年に実施した小中学校への授業2件について、実習デモンストレーションを含む授業内容を報告した。
(詳細はHPの活動報告を参照)
また、本会正会員である鳥居邦夫氏による「グルタミン酸の有用性」を中心とした最近の成果が講演された。

6.個別発表の概要と主な質疑応答

(1)発表1 「微生物の働きと発酵の面白さを学ぶ」
本会理事の永井和夫氏が身の回りで働いている眼に見えない微生物の役割を説明すると共に、実習協力者である(株)明治の有江部長から2種類の乳酸菌が働いてヨーグルトが美味しくできること、なぜ牛乳のタンパク質が固まるかを乳酸菌の顕微鏡画像を交えて解説を行った。

また、各自で、微生物を最初に観察したレーベンフックの顕微鏡を模したテレフォンカードとビーズを組み合わせた簡易顕微鏡の作成体験を行った。

・主な質疑応答:
①ヨーグルト菌の顕微鏡写真は何倍ほどか?
このデモンストレーションでは位相差顕微鏡なので見易いが、一般顕微鏡でも800倍以上ならば見れる。

②小学校の授業の位置づけ?
指導要領による理科の授業ではなく、総合学習として実施した。

③ヨーグルト、顕微鏡、説明・解説など盛り沢山ですが、小学生の反応は?
最後まで集中力が続かなかった部分もあったが、実習でも手作業もあり、全般的に好評でした。「特にヨーグルトが美味しかった。ヨーグルトが自分で作れたことがとても楽しかった」という反応でした。
児童の感想などはHPの活動紹介、授業・実習(ここをクリック)を参照頂きたい。

(2)発表2 消化における「タンパク質」の分解:
本会正会員の横関健三氏が消化における「タンパク質」分解の意義、位置づけを解説した。
また、体温近くでタンパク質分解酵素によってカゼイン(タンパク質)が分解されることを、高次構造のタンパク質に結合して発色するブリリアントブルーを用い、酵素反応の進行過程でその青色発色が抑えられることで可視化した。
純度の高い酵素を使い、日本の小中学校の授業では初めての成功となった。

・主な質疑応答:
①この授業の位置づけ、意義は?
中学2年「人体の勉強:消化」の中で、現状ではでんぷん(アミラーゼ)が主体の授業しか出来ていない。色の変化で興味を持たせながら、小腸でのタンパク質消化を実習できた点で意味がある。

②この実習で、小腸(人体)タンパク質の消化は生徒にイメージできたか?
唾液の実習ほどではないが、最初にしっかりとした説明、解説があったので、かなりイメージできた。
生徒の感想がHPで掲載されているが、理解している生徒もいた。
授業・実習(ここをクリック)を参照下さい)

③味覚と行動で、うま味を取りたくなる理由?
「のどが渇いたから水を飲む」という単純な関係とは異なる。
脳の判断なので、次の講演で解説される筈。

④授業時間はどれくらい?
50分未満で、一単元で終わるように仕組んだ。

⑤基本味覚の中に辛味は入っていないのか?
基本の味覚ではない。 温冷感を感知するので皮膚にもある。

(3)(講演)「おいしさは脳が決める」
本会正会員の鳥居邦夫氏がうま味調味料「味の素」の主原料であるグルタミン酸が味細胞の受容体を介して基本味の一つである「うま味」を感じさせること。
この受容体が舌のみならず消化管全体に分布しており、その神経刺激が脳に伝達され、食物の嚥下(飲み込み)、食した栄養物の消化管内での移動や消化を促進すること、そして血中にある20種のアミノ酸の生体恒常性維持(健康)につながること等の最近の研究成果を紹介した。
 

・主な質疑応答:
①昆布が多いオホーツクの海水は美味い?
生きた昆布はうま味成分を分泌しないので、そういうことはありません。

②タンパク質の不足が原因で、タンパク質やアミノ酸を嗜好する行動が現れるのか?
運動の後や妊娠時には食べ物の嗜好が異なることは知られており、カロリーやミネラルなどでみられるが、タンパク質不足による行動変化は体タンパク質が多量にあり、一部を分解することで対応できるので直ぐには見られず、欠乏の認知時間が掛かる。
「必須アミノ酸」の一つであるリジン欠乏では一週間程度必要である。

7.終了後の感想(抜粋)

アンケートを提出頂いた全ての方は、「微生物の働きと発酵の面白さを学ぶ」、「消化における「タンパク質」の分解」、(講演)「おいしさは脳が決める」の何れにも「大変 参考になった」と回答頂きました。
また、食べ物を材料として、子供たちに興味を湧かせる実験教材の開発への敬意、並びに、授業での実用化と発展に期待するご意見が多く見られました。

以上