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生物学はいかに創られたか(7.4) ~生物学の夜明け:メンデル「雑種植物の研究」、精密な観察と深い考察にもとづく仮説および実験による仮説の証明~

 修道院に就職したメンデルは派遣されてウイーン大学へ留学し、物理学コースで学びました。大学から帰ると、専門学校の教員として物理学と自然史学を担当し、修道院では、庭園につくられた植物学の実験圃場の管理を任され、エンドウの遺伝を研究しました。1866年に発表された「雑種植物の研究」は8年間の集大成です。

 メンデルのこの研究は、精密な観察と深い考察から生まれる仮説を、実験によって証明するという近代生物学の画期的革命的な第一歩であると考えられます。多くのエンドウを栽培し、膨大な数のデータから遺伝の規則性を明らかにしましたが、山のようなデータの中に埋もれて混乱することなく、データを整理し、遺伝の規則性にたどり着いたのは、自らの仮説に対する確固たる自信があったからだと思われます。仮説を証明するために山のような実験を実施し、膨大な数のデータが必要だったとさえ言えます。数千株ものエンドウを栽培し、数千個の種子を観察することによって、仮説の正しさがますます見えてくるのですからデータの山に埋もれることは決してなかったのです。仮説に沿って計画された実験から膨大なデータが生まれ、仮説の正しさが証明されていくさまは実に見事なものです。メンデルの物理学と数学の素養が発揮され、生命の神秘に関する大きな真理が明らかになりました。

 研究の動機
 観賞植物の育種で行われる人工授精では、異なる形質をもつ親からできる雑種は、どちらか一方の親の形質を表現し、別の親の形質は消えてしまうことが多いのですが、雑種から生まれる第1世代目では、消えてしまった親の形質がふたたび現れることが認められていました。このはっきりした法則性を追跡し、定性的ではなく定量的な規則を明らかにするために実験を行いました。

 実験に用いる植物の選択
 実験植物に必要な条件は次の通りです。
1.代を重ねても変わらない対立形質(種子が円形と角形、高い茎と低い茎など)があること。
2.開花期に他の植物の花粉の影響をふせげること。
3.雑種とその後に続く世代で、稔性(成熟した種子をつくること)に障害がないこと。
エンドウはこれらの条件を満たし、路地や植木鉢で簡単に栽培でき、生育期間が短いことも便利で、メンデルはエンドウを選びました。

 エンドウは自家受粉なので、一つの花のおしべの花粉が同じ花のめしべに落ちて受粉が行われます。二つの別の花の間で人工授精させるために、一方の花からおしべを切りとり、もう片方の花の花粉を刷毛にとって、おしべを切りとったエンドウのめしべに接触させました(図7-4-1)。また人工授精では、両親の性を入れ替える正逆交雑も行いました。例えば、茎の高いエンドウの花粉を低いエンドウのめしべに受精させる実験と同時に、低い株の花粉を高い株のめしべに受精させる実験を並行させたのです。

 購入した34のエンドウ種子から、世代を重ねても形質が不変な種子を2年の試験期間をかけて選びました。例えば、茎の高さに注目する実験では、栽培を重ねても茎高エンドウの種子のすべてが茎高エンドウを生むような不変型の種子が選ばれ、一方、茎低エンドウでも同様でした。つまり不変型の親を使って実験は開始されました。実験に採用した対立形質は次の通りです。括弧内の優性、劣性の区別は、次の実験(1)で得られた結果です。
1.種子の形:円形(優性)と角ばってしわがある(劣性)。
1.種子の形:円形(優性)と角形(劣性)。
2.種子(子葉または胚乳)の色:黄色(優性)と緑色(劣性)。
3.種皮の色:灰色(優性)と白色(劣性)。
4.さやの形:一様に膨らんでいるさや(優性)と種子と種子の間にくびれがあるさや(劣性)。
5.さやの色:緑色(優性)と黄色(劣性)。
6.花の位置:軸に沿って脇に分布する脇生の花(優性)と軸の先端に咲く頂生の花(劣性)。
7.茎の高さ:約200cmの高い茎と(優性)と約30cmの短い茎(劣性)。

 実験結果(1):雑種の形態
 対立形質をもつ両親の間で人工授精を実施し、雑種をつくりました。雑種の形質七つのすべてが両親の形質の一方に完全に似ていました。両親の形質のうち、変わらずに雑種に移行する形質を優性、雑種になると隠れてしまう形質を劣性と、以後呼ぶことにしました。正逆交雑でもまったく同じ結果が得られました。
 
 この項に関してメンデルの記述は簡単ですが、次のことは以後の理解を助けるためにつけ加えています。

1.人工授精で得られた雑種の種子は人工授精の場となった親の株にできます。したがって、種子の形と色についての情報は、得られた雑種種子を栽培しなくても親の株の上で観察されます。この実験では、親の株にできた雑種の種子はすべて円形で黄色でした。
2.種皮も含めて、茎の高さや花の色など、そのほかの情報は翌年に雑種種子を栽培してどのような形質が現れるかを調べる必要があります。この実験では、翌年栽培された株はすべて優性形質を表しました。
3.メンデルは世代が重なるにつれて、不変種→雑種→雑種第1代→雑種第2代と命名します。

図7-4-1 人工授精による純系種から雑種の育種
図7-4-1 人工授精による純系種から雑種の育種


 実験結果(2):雑種の第1代目
 親の株の人工授精によって、親のめしべから発達した種子が雑種の種子で、翌年にその種子を栽培した株に現れる諸形質が雑種の特徴でした。

 同様に、人工授精によって得られた雑種種子を栽培すると、雑種株が生育しその株に雑種第1代の種子が得られ、さらに翌年その種子を栽培すると、雑種第1代の諸形質の特徴が明らかとなります。

 メンデルは結果から先に述べます。優性形質のみならず、雑種では隠れていた劣性形質もその特徴を十分に再現し、優性と劣性の比は、決定的明確に3:1でした。先に示した対立形質すべてに同様でした。正逆交雑でもまったく同じ結果なので、一緒にまとめて計算にかけることができました(図7-4-2)。

 種子の形:雑種の種子253を栽培し、7324個の第1代目の種子が得られ、5474個が円形で、1850個が角形で、その比は2.96:1でした。
 種子の色:雑種の種子258を栽培し、得られた第1代目の種子は6022個が黄色で、2001個が緑色でした。その比は3.01:1でした。
 種皮の色:第1代目の種子を栽培し、生育した929株のうち、705株が灰色種皮をもち、224株が白色種皮をつけました。その比は3.15:1でした。
 さやの形:栽培した1181株のうち、882株が膨らんだ形、299株がくびれていて、その比は2.95:1でした。
 さやの色:580株のうち、428株が緑色、152株が黄色で、両者の比は2.82:1でした。
 花の位置:858株のうち、脇生が651株、頂生が207株で、比は3.14:1でした。
 茎の長さ:1064株のうち787株が高く、277株が短く、両者の比は2.84:1でした。

図7-4-2 雑種第1代目の特徴
図7-4-2 雑種第1代目の特徴


 雑種第1代目は、優性形質を現すものが3で、劣性形質を現すものが1という規則性が明らかになりました。

 実験結果(3):雑種の第2代目
 実験(1)でつくられた雑種はすべて、優性形質を表現していましたが、親から受け継いだ劣性形質の原基(今でいう遺伝子)が消えてしまったのではありませんでした。雑種を栽培し、第1代目を観察することによってそのことが明らかになりました。劣性形質を現す株が現れたのです。

 第1代目で優性形質を現した株にも劣性形質を隠しもつ雑種型のエンドウが含まれているにちがいない、とメンデルは推測します。

 目には見えないが隠れもっている劣性の形質を明らかにし、しかも数量的にはっきり(定量的に)把握するためにはどんな実験を実施すればよいのでしょうか。皆さんも考えこんでみる価値があります。つまり、メンデルの推測(仮説)が真理であることを証明する実験です。この仮説はその後の生物学にとても大きな影響を与えるものになりました。

 第1代目がもっている隠れた形質は、第1代目の種子を栽培して第2代目の株をつくることによって明らかになるだろう、とメンデルは考えました。そこで、第一代目の種子を栽培し、その株にできる第二代目の種子と、その種子を栽培してできる第2代目の株を観察しました。

 メンデルはこれまでと同様結果から書き始めます。

 第1代目で劣性形質を現した株は、第2代目でもその形質は変わらず、さらにその子孫まで不変でした。つまり不変劣性でした。

 第1代目で優性形質を現した株は、このうちの3分の2は3:1の比で優性形質と劣性形質を示す子孫をつくり、雑種と同じふるまいをしました。3分の1の部分のみが優性形質でその子孫まで不変優性でした。つまり、第1代では、不変優性:雑種:不変劣性の比が1:2:1と分かれたのです。

 種子の形:第1代目の円形の種子565粒を栽培しました。そのうち193株ではふたたび円形の種子だけをつけ、その形質は代を重ねても不変でした。しかし372株では、同じ株に円形と角形の種子が3:1の比で生じ、雑種型のふるまいをしました。不変優性と雑種型が分かれ、その比は193:372(1:1.93)でした。
 種子の色:第1代目の黄色の種子から育てた519株のうち、166株はすべて黄色の種子をつけましたが、353株は3:1の比で黄色と緑色の種子を結びました。不変優性と雑種型の比は166:353(1:2)でした。


 ある種子が不変優性なのか雑種型なのかを見きわめる以下の実験は実に巧妙です。優性の形質を表現しているエンドウに不変型と雑種型が混じっているにちがいない、という仮説にもとづき、その区別をすること、およびどのような比で混じっているかを、明らかにしています。

 種皮の色:第1代目で灰色の種皮だった100株を選び、それぞれの株にできる雑種第二代目の種子をランダムに10個ずつ採取し、翌年に栽培しました。100株のうち36株では、10個の種子から育てられた株がすべて灰色の種皮で、不変優性でした。64株では、10個の種子から育てられた株が灰色と白色の種皮を混合でつけ、雑種の性質を示しました。不変優性と雑種の比は36:64(1:1.78)でした(図7-4-3、図7-4-4)。


図7-4-3 雑種第2代種子が雑種型か不変型かの判別方法
図7-4-3 雑種第2代種子が雑種型か不変型かの判別方法


図7-4-4 種皮灰色雑種第2代種子(種皮灰色雑種第1代株にできた)の雑種型と不変型の分布
図7-4-4 種皮灰色雑種第2代種子(種皮灰色雑種第1代株にできた)の雑種型と不変型の分布


 同様な手法で他の形質についても調べ、さやの形では29:71(1:2.44)、さやの色では40:60(1:1.5)、花の位置では33:67(1:2.03).茎の長さでは28:72(1:2.57)でした。

 ここで明らかになったことは、雑種から生じる第1代目の内容は、表現型としては(見た目には)優性:劣性は3:1ですが、表現型が優性の株の内実は雑種型:不変優性が2:1となりました。つまり、雑種第1代目の内容は、不変優性1、雑種型2、不変劣性1となりました。対立形質から生じる雑種はそのうち半数がふたたび雑種を生じ、他の半数は不変優性および不変劣性を同じ比で生じるのです。

 実験結果(4):多数の対立形質が組み合わされている雑種の子孫
 これまでの研究では、単一の対立形質が雑種とその子孫で展開する規則性を調べました。続いて、複数の異なった対立形質が交雑によって雑種の中で組み合わさる場合の規則性について実験を進めました。

 メンデルは、これまでの研究結果を「優性形質をA、劣性形質をa、両形質が組み合わされた雑種をAaと表すと、雑種の第1代目の子孫では A + 2Aa + a の展開式が得られ」と書き、「優性形質と劣性形質の出現比は決定的明確な比 3:1」と表現しています。

 優性因子と劣性因子を掛け合わせて得られる1:2:1という結果はただちに数学の公式 (A + a)2 = A2 + 2Aa + a2 を思い出させます。調べた七つの形質についてすべてにこの公式が成り立つのですから、それぞれの形質が他の形質に影響されることなく独立に動いていることになります。

 数学が得意で物理学者のメンデルは、この段階で、以後の実験の結果をすべて予測できたのではないかと思われます。第4の実験の直後でメンデルは次に述べるような考察を展開しています。込み入って複雑な実験の進行を理解しやすいように、メンデルの頭の中に既にあったと思われる全体像をあらかじめ紹介します。

 一つの対立形質に注目した場合、
雑種(A + a) と雑種 (A + a)を掛け合わせた結果は AA + 2Aa + aa (メンデルは表現型に重きを置いてA + 2Aa + aと表現しています)でした。
 二つの対立形質に注目し、雑種(A + a 、B + b) と雑種(A + a、B + b)を掛け合わせた場合は、AA + 2Aa + aa と BB + 2Bb + bb が組み合わされ、
AA x (BB + 2Bb + bb) + 2Aa x (BB + 2Bb + bb) + aa x (BB + 2Bb + bb)= AABB + AAbb + aaBB + aabb + 2(AABb + AaBB + Aabb + aaBb) + 4AaBb となります。

 この式をメンデルは次のように整理分類します。両形質ともに不変型因子をもっている株のグループ(AABB + AAbb + aaBB + aabb)、片方は不変型因子で他方は雑種型因子をもっている株のグループ(AABb + AaBB + Aabb + aaBb)、両形質ともに雑種型因子(AaBb)の株です。3種類の株が出現する割合は1:2:4と推測されます。

 次のような分類も予習してください。例えば、Aを種子の形、Bを種子の色とします。AAとAaは円形で aaは角形です。同様にBBと Bbは黄色で bbは緑色です。したがって、
AABB + AAbb + aaBB + aabb + 2(AABb + AaBB + Aabb + aaBb) + 4AaBb は
円形・黄色+円形・緑色+角形・黄色+角形・緑色+2(円形・黄色+円形・黄色+円形・緑色+角形・黄色)+4円形・黄色 
と翻訳されます。

 さらに整理すると、
円形・黄色(AABB 2AABb 2AaBB 4AaBb)
円形・緑色 (AAbb 2Aabb)
角形・黄色 (aaBB 2aaBb)
角形・緑色 (aabb)
となります。表現型は円形・黄色でもその内実には4種類あり、円形・緑色の内実には2種類、角形・黄色の内実も2種類、角形・緑色は1種類と推測されます。そして、円形・黄色、円形・緑色、角形・黄色、角形・緑色の種子が出現する割合は9:3:3:1になると推測されます。

 メンデルはこの推測を見事に実験で証明しています。

 対立形質に種子の形(A、a)と種子の色(B、b)を選び、両者とも不変優性(AABB)の株と両者ともに不変劣性の株(aabb)から人工授精で雑種(AaBb)をつくりました。雑種の種子はすべて円形で黄色でした。
AABB(円形・黄色) × aabb(角・緑色) → AaBb(円形・黄色)

 雑種15株から第1代目の種子556粒を得ました。4種類の種子(円形・黄色、円形・緑色、角形・黄色、角形・緑色)が混ざっていました。円形は優性ですからAAとAaから生じ、角形は劣性でaaからしか生じません。同様に黄色はBBとBb、緑色はbbに由来します。したがって、円形で黄色の種子なら、AABB 、AABb、 AaBB、 AaBbの背景をもちます。同様に、円形・緑色種子はAAbbとAabb、角形・黄色種子はaaBBとaaBb、角形・緑色種子はaabbに由来していることになります。つまり見かけは4種類の種子でも、9種類の種子から成り立っています。4種類の種子をさらに9種類に細分類しなければならないのです。そのために第2代目の種子を調べねばなりません。

 第1代目種子556粒の内訳は以下の通りでした。
315粒は円形・黄色種子でAABB,AABb, AaBB, AaBbの混合物、
101株が角形・黄色種子でaaBB,aaBbの混合物、
108株が円形・緑色種子でAAbb,Aabbの混合物、
32粒は角形・緑色種子でaabb 単独です。

 翌年、556粒すべての種子を栽培しました。円形で黄色の315粒のうち、301粒が発芽して結実し、得られた第2代目種子の内容は以下の通りでした。
38株は円形・黄色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・AABB
65株は円形で色は黄色か緑色・・・・・・・・・・・・・・・・・AABb
60株が形は円形か角形で黄色・・・・・・・・・・・・・・・・・AaBB
138株は円形で黄色か緑色、または角形で黄色か緑色・・・・・・・AaBb

 一つの株に単一の種子またはいろいろな種子が混ざって結実し、このクラス(円形・黄色)にはAABB, AABb, AaBB, AaBbしかないのですから、それぞれが特定できるのです。例えば、AABbは不変のAAと雑種のBbですから、AAからは円形しか生みませんが、Bbは3:1の比で黄色と緑色を生じるのです。同様に、AaBBは雑種のAaと不変のBBですから、Aaから3:1の比で円形と角形が生じ、BBからは黄色しか生みません。AaBbは形(Aa)も色(Bb)も雑種ですから、円形で黄色か緑色、または角形で黄色か緑色と4種類の種子が生まれます。

 第1代目の見かけは円形・黄色種子の背景が内実は4種類(AABB、AABb、AaBB、AaBb)に細分類され、細分類された種子の背景が、それぞれ、AABBは円形・黄色種子を表現し、AABbは円形で黄色か緑色種子、AaBBは円形か角形で黄色種子、AaBbは円形で黄色か緑色、または角形で黄色か緑色種子を結ぶということを予想しているから、こんな見事な細分類が可能なのではないかと思われますがいかがでしょうか。

 次に、角形で黄色の101粒の種子(aaBB,aaBbの混合物)からも第2代目の種子をつくりました。96粒から第2代目の種子が得られ、その内容は次の通りでした。
28株が角形で黄色・・・・・・・・・・・aaBB
68株が角形で黄色か緑色・・・・・・・・aaBb
 
 円形で緑色の108粒の種子(AAbb,Aabbの混合物)から102株が結実し、その内容は以下の通りでした。
35株が円形で緑色の種子・・・・・・・・AAbb
67株が円形で緑色と角形で緑色・・・・・Aabb

 角形で緑色の32粒から30粒が結実し、親とまったく同じ種子を生じました。・・aabb

 実験結果は次のように整理されます。

両形質が不変で次代でも変化しない種子平均 33
AABB38
AAbb35
aaBB28
aabb30
一方の形質が不変で、他方が雑種種子平均 65
AABb65
aaBb68
AaBB60
Aabb67
両形質が雑種種子 AaBb138


 両形質が不変で次代でも変化しない種子の出現平均、一方の形質が不変で、片方が雑種の種子の出現平均、両形質が雑種の種子の出現比は33:65:138で、これは紛れもなく、メンデルが推測した1:2:4の近似値である、と結論しています。

 種子の形と色の観点から実験結果を整理すると以下のようになり、円形・黄色:円形・緑色:角形・黄色:角形・緑色の出現比は301:102:96:30となります。これはまさしく、メンデルが推測した出現頻度比(9:3;3;1)の近似値を与えることになります。
円形・黄色 (AABB:38 2AABb:65 2AaBB:60 4AaBb:138)合計301
円形・緑色 (AAbb:35 2Aabb:67)合計102
角形・黄色 (aaBB:28 2aaBb:68)合計 96
角形・緑色 (aabb:30)合計 30


 続いて、本実験の冒頭に紹介した考察を述べ、
1x(AABB + AAbb + aaBB + aabb) + 2x(AABb + aaBb + AaBB + Aabb) + 4xAaBb
の展開式を紹介し、これはAA +2Aa + aa と BB + 2Bb + bb を組み合わせるとすべて得られる、としています。


 考えてみよう
 メンデルは、種子が茎低(不変劣性)、頂生の花(不変劣性)、膨らんださや(不変優性)の株にできためしべに、茎高(不変優性)、脇生の花(不変優性)、くびれたさや(不変劣性)の株の花粉を人工授精しました。雑種はどのような形質を表すでしょうか?
 メンデルは研究を始めるにあたり、不変茎高種子、不変茎低種子、不変頂生種子、不変脇生種子、膨らんださやの不変種子、くびれたさやの不変種子をもっていました。これらの種子は単一の形質に関しては不変ですがそのほかの形質については不変か雑種か不明です。上記実験が可能になる2種類の種子をどのような手順で用意できるでしょうか?


参考書
メンデル著 小泉 丹訳「雑種植物の研究」岩波書店 1928
メンデル著 岩槻邦男 須原準平訳「雑種植物の研究」岩波書店 1999
Science Explore [PRENTICE Life Science] (PEARSON Prentice Hall, Needham, Massachusetts, Upper Saddle River, New, Jersey), 2007
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