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バイオキッズ・サロン

第4話 5種類の醤油についてご存知ですか?

5種類の醤油についてご存知ですか?

今回は料理教室でのお話のようになりそうですが、意外と知られていないお醤油の種類のお話しをします。

日本の醤油の種類はどのようにして生まれたか
 前回、醤油のルーツは古代からの発酵食品である「ひしお(醤)」であること、そして、その中でも大豆を原料とする「まめひしお(豆醤)」が醤油の直接のルーツであることをお話ししました。この豆醤はたん白質食品として重宝されましたが、またうま味があるので調味目的にも使われました。しかし、水気が少ない半固体状でしたので、調味料としては使いづらい面がありました。文明が進むにつれて、人々は調理に使いやすい液体状の豆醤を大変に欲しがりました。でも、人々のニーズを満たす量の液体状の豆醤を、安価でしかも美味に実現するには製造技術上の革新が必要でした。大陸で豆醤が出来てから、千年を超える年月をへて、日本では江戸時代に入る直前になって「醤油」という名称が文献に出てきます。この頃、やっと製品が流通する段階にまで製造技術が向上したのでしょう。
この初期の「醤油」の種類は2種類あったと思われます。1603年発行の日本―ポルトガル辞書に、≪Tamari「タマリ」:味噌から取る非常に美味しい液体。食物の調理に用いられる。Xoyu「ショウユ」:日本で食物を調理し、味を付けるためによく使われる小麦と大豆から製する液体。≫と醤油を意味する二つの単語が説明されています。後で出てまいりますが、前者が現在の「たまり醤油」の始まりであり、後者が「こいくち醤油」の始まりであったようです。
このようにして生まれた醤油は江戸時代に全国に普及しました。その過程で、いくつかの地方でその土地の好みによる変法が生まれました。この変法の醤油は、それぞれ優れた特徴があり、現在まで生き続け、その地方で引き続き好まれておりますし、全国にも広がり、使用目的に合わせて使い分けられて来ております。その結果、醤油の種類が増え、現在、日本全体で5種類が醸造醤油として認められ流通しております。「こいくち(濃口)」、「うすくち(淡口)」、「たまり(溜り)」、「さいしこみ(再仕込み)」それに「しろ(白)醤油」の5品種です。日本農林規格(JAS)も日本の基本の醸造醤油をこの5つに分類しております。

基本の醸造醤油は5種類
それぞれの種類の醤油をもう少し説明します。
 たまり(溜り)醤油:小麦も少量入れますが、原料の大部分に大豆を使い醸造します。色が濃く、トロリとしたコクのある濃厚なうまみと独特の香りが特徴です。さしみとか照り焼きのたれなどに向きます。歴史的には味噌のたまり液から生まれたものであり、長く味噌に副生させて同時製造されました。現在では醤油単独工程で作られますが、原料の割合の違いの他に味噌玉で麹をつくるなど他の醤油と違ったやり方が残っており、独特の香味を示します。日本の醤油の元祖ともいわれ、江戸初期には全国的に溜り醤油が主流であったそうです。現在全国での生産量シェアは1.5%と低いですが、東海3県で好まれ、この地方ではシェアは10%を超えます。

 こいくち(濃口)醤油:現在全国の生産量シェアが84%と圧倒的に大きく日本の醤油を代表する種類です。煮物、焼物、だし、たれなどに広く使われ、深いうま味、甘み、酸味、味を引き締める苦みがあり味、色、香りのバランスがよいとされます。「溜り」に次ぎ早い時期に関西で生まれ育ちましたが、江戸中期以降、関東中心に改良されて発達し日本中に広がりました。原料は大豆と小麦がほぼ等量です。

 うすくち(淡口)醤油:現在全国の生産シェアは13%であり、西日本、特に関西地方で多く使われています。「濃口」に比べると色や香りが薄く、うま味も控えめにしてあり、料理素材の持ち味や色合いを生かすのに向いています。江戸時代初期に関西で「濃口醤油」から改良考案され、江戸後期から京都中心に流行し広まって行きました。「濃口」と同じく原料は大豆と小麦がほぼ等量です。多くの場合に醸造の仕上げに甘酒や水あめを加えます。

さいしこみ(再仕込み)醤油:原料割合や製法は濃口醤油と同じです。ただ違うのは、仕込みに使う塩水の代わりに醸造した(生)醤油を使います。そうすると、一部が2度醸造したようになり、風味、色とも濃厚に仕上がります。つけ、かけ醤油に適し、さしみやすしに向くそうです。現在の全国の生産シェアは1%ですが、山口県を中心に山陰から九州で好まれ、中国地方のシェアは6%にも達します。江戸時代中期に周防国の柳井で考案されたと言われています。

 しろ(白)醤油:この醤油は原料組成が独特であり、大豆をほとんど使わず、小麦を主原料とします。全国の生産シェアは1%弱ですが中部地方でのシェアは4%です。色の薄さが重要で、ビール程度の色に抑えて作ります。糖分は高いのですが、うま味もコクも抑えられており、料理素材本来の色や味わいを生かす関西料理に向いており、隠し味やうどんの汁などに使われます。江戸時代後期に今の愛知県碧南市で考案されたそうです。

 以上の5種類が日本の基本の醸造醤油です。これらの醤油はお互いに大きく異なっているように見えますが、醸造方法はほぼ共通しています。原料の大豆と小麦を加熱処理して、混ぜた物全量に麹菌を植え2,3日で麹にしてから、塩水に懸濁して容器に入れ、麹菌酵素の分解作用を働かせ、乳酸菌と酵母を生育させて発酵させ、数か月から1年で醤油にします。この工程はほぼ共通なのです。この条件にバリエーションがあり、出来上がった醤油が皆さんが使い分けされている種類に分かれるのです。
そのほかに、分類分けとしては、醤油の成分の濃さによって、「特級」「上級」「標準」と言う等級別があります。また、大豆などの穀物のタンパク質を塩酸や酵素により加水分解して製造した液を、醸造した醤油に混合したり、混合して熟成したりして製造したものを「混合方式」、「混合醸造方式」と言い、醸造のみの物を「本醸造方式」という製造方式による分類もあります。これらはラベルに表示されております。

その他に見聞きする醤油の種類は何か?
 スーパーの醤油関連の売り場に行くと、上記の醤油の種類の他に「丸大豆醤油」、「有機醤油」、「減塩醤油」などがあり、そのほかに「だししょう油」、「さしみしょうゆ」、「土佐しょうゆ」、「昆布しょうゆ」、「おろし醤油]などの多数の醤油と言う品名を付けた商品が並んでおります。混乱されると思います。前者の醤油は前述の基本の醤油のどれかの種類に入ります。後者の方は基本の醤油に鰹節や昆布などの成分を合わせて調整する、つまり、あらかじめ「だし」を加えた加工調味液です。汎用調味料として作られておりますが、基本の醤油ではありません。
 これらを店頭で見極めるには、商品のラベルの一部に印刷されている四角の囲いの「枠」内を見てください。その一番上の「名称」という項目に記載されているのがその商品の正式な種類です。上記の前者には「こいくちしょうゆ」とか「うすくちしょうゆ」とか記されているでしょう。後者は「しょうゆ加工品」とか「しょうゆ調味液」と記されております。
 前者についてもう少し説明します。現在の大部分の醤油の大豆原料は、大豆油を搾油した後の脱脂大豆を使っております。搾油しない大豆で作った醤油は「丸大豆醤油」と名乗ってよいことになっています。昔の醤油は全部「丸大豆醤油」であった訳ですね。醤油の香味はどちらかが良いわけではなく、一長一短で使う人の好み次第と言われています。「有機醤油」は使う大豆、小麦とも有機栽培の物を使った場合に表示出来ます。「減塩醤油」は醤油を電気透析で脱塩し、塩分濃度を低下させた、塩分摂取量を少なくしたい人用のものです。これらは基本の醤油ですので、先にご説明しました5種類のいずれかであり、「枠」内の名称に「種類」が書かれています。

 皆様の中にはご家庭で醤油の代わりに、「つゆ」「たれ」を使う方がおられると思います。これはつゆ、たれ用に専門調味料として醤油をベースに調製されたものです。もちろん醤油ではありませんが、色々な家庭料理の調味に便利に使えることが多く、「汎用」調味料的になってきております。最近では全国の生産液量で比較すると基本の醤油の1/3位の量に増えております。日常の家庭料理を作る立場の方から言えばこれらも醤油の「種類」の一つかもしれません。

 
次は、醤油様液体調味料の一つとして魚醤に関するお話をしようと思います。


参考資料: 
・しょうゆ情報センターホームページ ・キッコーマン国際食文化研究センターホームページ 
・飯野亮一:Food Culture, No.3,21(2001) 
・食彩辞典 29 せうゆ 第一三共ホームページ


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