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バイオキッズ・サロン

生物学はいかに創られたか(1)~理科教育における科学的姿勢の大切さ~

生き物にかこまれているキッズ         柴井博四郎

 キッズたちは毎日の生活で、生き物と慣れ親しんでいます。家や学校で、また通学途中でも、いろいろな木や花を見るでしょう。動物園や水族館では、めずらしい野生動物や魚を見るでしょう。山に行けば、鳥がさえずっています。家で飼っている犬や猫を撫でて可愛がります。桃やマツタケの香り、台所から匂ってくる食べ物の香りに食欲をそそられるでしょう。好物の肉も、あまり食べたくない野菜も生き物です。つまり、私たちが生きていられるのは、他の生き物を食べているからです。他の生き物の生命に頼りながら毎日が生きていられるのです。

 五感でとらえられる範囲で馴染んでいると言っても、キッズたちは生き物について何も知らないと言ってもよいでしょう。ご飯や肉や野菜を食べるだけで、どうして生きていけるのでしょうか。食べ物が体の中でどのように変化して、私たちの命を支える仕組みをつくっているのでしょうか。生き物はどのように子孫を増やすのでしょうか。クジラのような大きい生き物は目で見えますが、千倍の顕微鏡でしか見えない、小さな微生物がいるなんて想像できるでしょうか。

 今は何も知らなくても、十六年間の学習の後、人類が生き物について知っていることのすべてを知ることができるのです。人類が数千年もかけて、少しずつ解き明かしたことのすべてを学べるのです。三千年前の人類は、今のキッズと同じように、生き物にかこまれていましたが、生き物について何も知りませんでした。生き物の神秘を感じ、「何故(なぜ)」という問いかけが生まれ、考えに考えて答えを出そうと試みました。そのようなことを三千年もくり返してきたのです。そしていろいろなことが解き明かされました。人類が三千年もかけて解き明かした秘密を、キッズたちは十六年間の学習ですべて知ることができるのです。三千年前の人類は生き物について何も知りませんでしたが、生き物について不思議さを感じ「何故」と問いかけ、その「何故」から生物学がはじまったのです。キッズたちは、今何も知らない時に、「何故」という思いをもつことがとても大切です。知らない時に、「何故」、「何故」をくり返す訓練が理科の原点です。

科学的な姿勢
 人類は生き物について多くのことを知るようになりましたが、知ってみると、はじめに考えていたよりも神秘の奥はもっと深いことに気がつくようになりました。つまり、知ってはいるが何も知らない、ということに気がついているのです。ですから、キッズたちも、十六年の学習の後で、昔の人と同じように、何も知らないところから始めねばならないのです。

 生物学にかぎらず、自然科学の研究では、「知ってはいるが何も知らない」というのが基本的な姿勢です。知ることは大切ですが、同時に、知らないということを知り、知らないことを知るように努力することが貴重です。これを科学的な姿勢と言ってみます。キッズたちの学習の中で、このような姿勢が育まれたら、キッズたちの未来は明るくなるものと確信します。理科教育では、先人達が解き明かした自然の秘密を知ることも大切ですが、この科学的な姿勢を身につけることも同じように大切なのではないでしょうか。

科学的な姿勢を育む
 過去三千年間、生き物の神秘を解き明かした先人たちは、「知らないことを知りたい」という知的な好奇心に動かされました。彼らが如何に考え、如何に実験したかを学ぶことは、科学的な姿勢を育むための助けになるかも知れません。実は、優れた研究者の指導を受けた弟子たちの中から、優れた研究者が生まれ、ノーベル賞受賞者の弟子からノーベル賞受賞者がうまれる、という傾向があります。弟子たちは、日常の研究生活の中で、優れた先輩研究者の科学的な姿勢を学ぶことができるからなのです。そのような観点で、生物学の歴史を復習してみます。くり返しになりますが、歴史を知ることに主眼があるのではなく、偉大な科学者の科学的な姿勢を学ぶことが大切なのです。
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